企業が本来あるべき姿は、製品やサービスの提供により社会貢献をすることで正当な対価を得ることといえます。
従業員にしかるべき給料を払い、株主に配当をすることも同様です。
しかしながら、ブラック企業と呼ばれるような悪質企業のなかには「働きがい」や「仕事のやりがい」などを強調し、低賃金で働かせ放題といった企業も存在します。
そこで今回は、やりがい搾取のブラック企業に騙されないために身に着けておきたい基礎知識について詳しく解説します。
やりがい搾取のブラック企業を見極めるポイント
やりがいに付け込んで従業員を低賃金でこき使おうとする企業は、残念ながら多数存在します。
特に未経験者の方や主婦の方を対象に、言葉巧みに騙して働かせようとしている企業は少なくありません。
一例として、以下のような企業はやりがい搾取のブラック企業の可能性が高いといえます。
- 会議や朝礼で出てくる言葉が「やりがい」「熱意」など精神論ばかり
- 企業理念や社内ルールが常識を超えて一種の宗教レベルになっている
- 結果を出せば高収入が得られると言って、いつまでも給料が上がらない
- クライアントの言うことがすべてで夜中や休日でも関係なく働かされる
- 社内の雰囲気がアットホームであることや仲間意識をやたらと強調する
- 働き過ぎが原因で体を壊してしまったり、自殺する人が過去に出ている など
もちろん一概には言えませんが、上記のような企業は従業員を消耗品のように扱う会社である可能性があります。
勤続を続けていても良いことはありませんから、早めに退職しましょう。
また転職サイトなどでこのような会社を見かけた場合は、応募を避けたほうが良いでしょう。
面接に進んでいくなかで、少しでも怪しさを感じたときは早めに辞退することをおすすめします。
特に具体的な仕事内容の記載や説明が少ないにも関わらず、精神論やアットホームさを強調する場合は要注意です。
会社にとりたてて強みが無い場合も多く、このような会社は将来性も見込めません。
従業員であるあなたが心得ておくべきこと
会社に雇われていると、どうしても会社の要望に従ってばかりという場面が多くなります。
しかし、何でも従えば良いというわけではありません。
従業員として働く上で心得ておくべき大切なポイントについて、順に解説していきます。
ブラック企業は役に立たない人を簡単に切り捨てる
ブラック企業は、総じて以下のような考えを持っていることが多いです。
- 会社に役に立つ人材は、給与のことを気にせず精一杯働くべき
- 会社に役に立たない人材は、速やかに自ら離職するべき
会社にとって必要な人材が退職を申し出た場合、「わが社は家族であり、家族は辞められないのだから、君も会社を辞めることはできない!」などと意味不明な言論で拒否してくる場合があります。
その一方で、会社にとって不要な人材に対しては、「わが社は家族ではないのだから、この場で辞表を書け」と退職強要をするわけです。
まるで奴隷制度ですが、ブラック企業のなかにはこのような会社もあるでしょう。
会社は労働者に対してしかるべき賃金を払う義務がある
そもそも仕事内容にかかわらず、会社は労働者に対して、しかるべき賃金を払う義務があります。
もちろん時間あたりの賃金は、最低賃金以上でなければなりません。
また週40時間以上の勤務を行った場合は、25%以上の割増賃金の支払いが必要です。
さらに法定休日や深夜労働をさせた場合は、それぞれ35%、25%を割増して支払わなければなりません。
何をいわれようともあなたには会社を辞める権利がある
会社は家族ではなく、会社と雇用契約を結び、組織として仕事を行う人の集合体です。
そのため正社員であればいつでも、ルールに沿って退職できる権利があります。
また契約社員の場合は契約終了時に契約を更新しない自由があり、この場合は会社が契約更新を希望していたとしても働かせることはできません。
会社を辞めるルールについては、以下の記事でも詳しく解説しているのであわせてご参照ください。
あなたの退職が原因で会社が倒産しても責任はない
会社を辞める権利があるといっても、「お前が辞めたら会社がつぶれてしまう。そうしたら損害賠償を請求する!」などと脅されるケースがあるかもしれません。
仮にあなたが辞めて実際に会社が倒産しても、あなたには一切責任はありません。
なぜならそれは、会社のマネジメント体制の不備として解釈されるためです。
仮に会社があなたを訴えたとしても、逆に従業員が退職した場合に備えなかった不備を問われ、会社側が責められる結果になってしまうことでしょう。
次の職場が見つからないというのは根拠のない嘘
ブラック企業を辞めたくても、「ここで駄目ならどこへ行っても通用しないぞ!」と言われてしまい、ためらうこともあるかもしれません。
しかし本当に役立たずな人ならば、会社は先に辞めさせています。
ですから、このような言葉は自社に残らせるための脅しでしかありません。
あなたは一定のスキルを持っているわけですから、次の職場は必ず見つかります。
やりがいを搾取する企業からは今すぐ退職を
もし不幸にも、あなたがこのようなやりがい搾取のブラック企業に勤務している場合は、一刻も早く退職しましょう。
あなたが生き生きとした社会人生活を取り戻すために、このような会社から離れることは欠かせません。
またこのような企業では、残業代の不払いが行われていることも多いですから、請求することで当面の生活費にあてることも可能です。
従業員を無理に働かせる会社に未来はない
なぜブラック企業が従業員を無理に働かせるのかについては、以下の理由が考えられます。
- 採用条件が同業他社に対して悪く、なかなか採用できない
- 業績が悪く利益が少ないため、人件費を上げられない
- まともに人件費を払うと、稼げるビジネスモデルではない
- 従業員はなるべく低賃金で使い、利益を経営者が独り占めしたい
列挙した理由のうち最後の理由を除けば、なんとか会社を生き残らせることが目的ということになります。
しかしこのような会社は、いわば崖っぷちの経営を続けていることになります。
少しでも経済状況が悪化すれば、たちまち倒産してしまうことも十分に考えられますから、あなたの人生を託すにはふさわしくありません。
また最後の理由に当てはまる場合は、あるタイミングで経営者の不正が明らかになる場合もあります。
そもそも残業代不払いがあれば立派な不正行為ですから、やはり働き続けるべき会社ではありません。
退職届が受理されなければ内容証明郵便で送付
ブラック企業では、会社が必要とする従業員の退職を拒否することも多いでしょう。
契約社員の契約期間中でもない限り、会社には従業員の退職を拒否することはできません。
しかし、なかには従業員を監禁して退職を撤回させたり、退職届を破り捨てるなど、常識では考えられない行為に及ぶ場合もあります。
このような場合は、会社に直接「配達証明付きの内容証明郵便」で送付することも考えましょう。
以下の記事でも退職トラブルを回避する方法について解説していますので、よろしければあわせてご覧ください。
未払い残業代を計算して適切に請求しよう
ブラック企業では人件費を節約するため、残業代の不払いが行われていることも多いです。
その場合は未払い残業の証拠を揃え、支払われるべき残業時間と残業代を計算して会社に請求しましょう。
未払い残業代の時効は2年ですが、場合によっては100万円以上の請求額になる場合があります。
未払い残業代を請求するときは、できれば弁護士などの専門家に相談すると良いでしょう。
企業には顧問弁護士がついていることも多いですから、素人がひとりで戦おうとするのは得策ではありません。
未払い残業代の請求については、以下の記事で詳しく解説しています。
良い会社への転職がブラック企業根絶の第一歩
社会人という言葉は、会社だけでなく、社会で生きる人という意味もあります。
そのため、あなたは会社に奉仕するのではなく、企業の社会的意義も考えて行動しなければなりません。
つまり、お勤めの会社が「社会的に存在してはいけないブラック企業」であると思った場合は率先して退職し、次の会社に転職すべきです。
優秀な人材が抜けていくことこそがブラック企業根絶への第一歩となると同時に、良い企業を成長させることにつながります。
あわせて未払い残業代も請求し、ブラック企業に対して合法的にダメージを与えましょう。
もしあなたの退職がきっかけでブラック企業が倒産した場合は、むしろ喜ばしいともいえるでしょう。
ブラック企業に勤めていた全従業員に対して、まともな企業に再就職するチャンスが与えられることになるからです。
あなたがブラック企業を退職し、良い会社に再就職することは、ブラック企業の企業活動を弱体化することにつながります。
まずは勇気を持って一歩を踏み出しましょう。
不安ならば弁護士などの専門家や、自治体の労働相談窓口に相談することをおすすめします。
あなたらしく働ける職場と出会えることを願っています。