「退職したら収入が途絶えるけど、失業手当もらえるから大丈夫でしょ」
と安易に考えている方、自己都合退職だと失業手当を受け取れるまで3ヶ月以上かかることを知っていますか?
仮に会社都合退職だとしても、即日で失業手当が振り込まれることはありません。
離職票が手元に届いてから、すぐにハローワークへ手続きに行ったとしても、7日間の待機期間を過ごす必要があります。
貯金がたっぷりあるならまだしも、3ヶ月も収入が途絶えてしまうとツラいですよね。
転職先の目処も立っていないとなると、なおさら1日でも早く失業手当を受け取りたいものです。
このページでは、失業手当の給付制限を避けるための条件について詳しく解説します。
失業手当を申請予定の方は、ぜひ参考にしてみてください。
失業手当の給付制限は大きく3種類ある
先ほどもご説明したとおり、ハローワークで手続きを済ませても失業手当はすぐに受け取れません。
この待たされる期間のことを給付制限と呼びます。
まずはどういったときに給付制限が発生するのかについてご説明します。
自己都合で会社を辞めた場合
「仕事がつまらなかったから」
「もっと新しいことに挑戦したい」
などの理由で会社を辞めた場合、離職票の退職理由は「自己都合」と書かれているはずです。
自己都合退職の場合、失業手当が振り込まれるまで約3ヶ月かかります。
これは退職日からカウントして3ヶ月ではありません。
退職後に離職票が手元に届き、ハローワークで必要な手続きを進めて、受給資格の認定を受けて、待機期間の7日間を経た日からカウントして3ヶ月です。
そもそも離職票が手元に届くまで、退職日から10日前後かかります。
手元に届いた翌日にハローワークで手続きをしたとして、実際に失業手当を受け取れるのは退職日からおおよそ3ヶ月半後と思ったほうがよいでしょう。
ハローワークからの職業紹介を拒んだ場合
自己都合退職による給付制限以外にも、ハローワークからの職業紹介を拒んだ場合も1ヶ月の給付制限をかけられる場合があります。
「面接に行ってみてください」
とハローワークから紹介された企業を、正当な理由なく拒否してはいけません。
職業訓練を受けるようにアドバイスされたときも同様です。
「正当な理由」という表現が難しいところですが、きちんと説明した上で紹介を断れば給付制限をかけられることはないはずです。
ハローワークの窓口で面談をするときは、決して横柄な態度は取らず、真摯な対応を心がけましょう。
不正に失業手当を受け取ろうとした場合
最後にもうひとつ、手続きを進める中で不正が発覚した場合、以後の失業手当は一切振り込まれなくなります。
給付制限というよりは、資格取り消しという表現の方が適切に思えますね。
それまでに受け取った失業手当も返還が命じられ、加えて不正に受給した失業保険の2倍以下に相当する金額を支払うように命じられます。
3倍返しと呼ばれることもありますが、要は罰金です。
どういうときに不正と判断されるのか、詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
給付制限なしで失業手当を受け取れる条件
ここまでご説明したように、自己都合退職だと失業手当を受け取れるのはハローワークで手続きをしてから約3ヶ月後です。
あなたが冬に退職した場合、失業手当が振り込まれる頃には桜が咲いているかもしれません。
「収入が途絶えた状態で冬を越すのはツラい・・・」
という方に朗報です。
特定の条件を満たすことができれば、自己都合退職でも3ヶ月の給付制限なしで失業手当を受け取れます。
どのような条件を満たす必要があるのか、詳しく見ていきましょう。
特定受給資格者
まずご紹介するのは、特定受給資格者という制度。
「うちの会社、今月末で民事再生することが決まったらしい・・・」
「もう2ヶ月も給料がまともに支払われていない・・・」
業績不振による会社の倒産をはじめ、給料の未払いや長時間残業を強いられるなど、不運に見舞われてしまう人も少なくありません。
「もうこんな会社辞めてやる!」
と退職した場合でも、分類上は自己都合退職になります。
ただし、特定受給資格者として認定されると、3ヶ月の給付制限を受けずにすぐに失業手当を受け取れるのです。
会社の倒産や事業が廃止になった場合
勤め先が倒産したり、担当部署の事業が廃止になった場合など、自己都合退職とはいえ事情が事情です。
ハローワークも鬼ではないので、事実関係を認めてもらえれば迅速に手続きを進めてもらえます。
具体的な認定基準は以下の通り。
- 倒産(破産、民事再生、会社更生等の各倒産手続の申立て又は手形取引の停止等) に伴い離職した者
- 事業所において大量雇用変動の場合 (1か月に30人以上の離職を予定) の届出が されたため離職した者及び当該事業主に雇用される被保険者の3分の1を超える者が 離職したため離職した者
- 事業所の廃止 (事業活動停止後再開の見込みのない場合を含む。)に伴い離職した者
- 事業所の移転により、 通勤することが困難となったため離職した者
引用元:厚生労働省 特定受給資格者の範囲の概要
たとえば勤務先の支社が撤退となり、片道3時間かかる本社に出勤するように言われて転職を決意した場合も特定受給資格者として認定される可能性があります。
給与未払いや長時間残業があった場合
会社は倒産していなくとも、あまりにひどい労働環境を理由に退職する人も少なくありません。
たとえば給料の未払いが続いたり、100時間を超えるような残業を強いられていた場合も、同じく特定受給資格者として認定されます。
細かい認定基準は以下の通り。
- 解雇 (自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇を除く。)により離職した者
- 労働契約の締結に際し明示された労働条件が事実と著しく相違したことにより離職した者
- 賃金(退職手当を除く。)の額の3分の1を超える額が支払期日までに支払われなかった月が引き続き2か月以上となったこと、又は離職の直前6か月の間のいずれかに3か月あったこと等により離職した者
- 賃金が、 当該労働者に支払われていた賃金に比べて85%未満に低下した (又は低下することとなった) ため離職した者 (当該労働者が低下の事実について予見し得なかった場合に限る。)
- 離職の直前6か月間のうちに3月連続して45時間、1月で100時間又は2~6月平均で月80時間を超える時間外労働が行われたため、又は事業主が危険若しくは健康障害の生ずるおそれがある旨を行政機関から指摘されたにもかかわらず、事業所において当該危険若しくは健康障害を防止するために必要な措置を講じなかったため離職した者
- 事業主が労働者の職種転換等に際して、当該労働者の職業生活の継続のために必要な配慮を行って いないため離職した者
- 期間の定めのある労働契約の更新により3年以上 引き続き雇用されるに至った場合において当該労働契約が更新されないことと なったことにより離職した者
- 期間の定めのある労働契約の締結に際し当該労働契約が更新されることが明示された場合において当該労働契約が更新されないこととなったことにより離職した者(上記(7)に該当する場合を除く。)
- 上司、 同僚等からの故意の排斥又は著しい冷遇若しくは嫌がらせを受けたことによって離職した者及び事業主が職場におけるセクシュアルハラスメントの事実を把握していながら、雇用管理上の措置を講じなかったことにより離職した者
- 事業主から直接若しくは間接に退職するよう勧奨を受けたことにより離職した者 (従来から恒常的に設けられている 「早期退職優遇制度」 等に応募して離職した場合は、 これに該当しない。)
- 事業所において使用者の責めに帰すべき事由により行われた休業が引き続き3か月以上となったことにより離職した者
- 事業所の業務が法令に違反したため離職した者
引用元:ハローワーク 特定受給資格者の範囲
細かく記載されていて、わかりづらいものも多いですよね。
ざっくりまとめてしまえば、いわゆるブラック企業から退職した場合、特定受給資格者に認められる可能性があるということです。
入社前に聞いていた話と入社後の待遇があまりにもちがったり、上司からのパワハラやセクハラがひどかったり。
ただし、解雇による退職が含まれているものの、懲戒解雇された場合だと特定受給資格者として認定されない点に注意してください。
「特定受給資格者として該当するかも・・・」
と思われた方は、まずは管轄のハローワークで相談してみてください。
特定理由離職者
特定受給資格者と似ていますが、特定理由離職者という制度もあります。
簡単にご説明すると、やむを得ない理由で退職をした方のこと。
他にも契約社員をはじめ、有期雇用で働いていた方が契約を更新できなかった場合なども含まれます。
さらに、自己都合退職の場合、通常だと雇用保険の被保険者期間が1年以上ないと失業手当をもらうことはできません。
しかしこれも特定理由離職者として認められると、雇用保険の被保険者期間が6ヶ月以上あれば失業手当を受け取れます。
やむを得ない理由と認められる条件
ではどういうときに「やむを得ない理由で退職をした」と判断されるのでしょうか。
特定理由離職者として認められる条件は以下の通り。
- 体力の不足、心身の障害、疾病、負傷、視力の減退、聴力の減退、触覚の減退等により離職した者
- 妊娠、出産、育児等により離職し、雇用保険法第20条第1項の受給期間延長措置を受けた者
- 父若しくは母の死亡、疾病、負傷等のため、父若しくは母を扶養するために離職を余儀なくされた場合又は常時本人の介護を必要とする親族の疾病、負傷等のために離職を余儀なくされた場合のように、家庭の事情が急変したことにより離職した者
- 配偶者又は扶養すべき親族と別居生活を続けることが困難となったことにより離職した者
- 次の理由により、通勤不可能又は困難となったことにより離職した者
- 結婚に伴う住所の変更
- 育児に伴う保育所その他これに準ずる施設の利用又は親族等への保育の依頼
- 事業所の通勤困難な地への移転
- 自己の意思に反しての住所又は居所の移転を余儀なくされたこと
- 鉄道、軌道、バスその他運輸機関の廃止又は運行時間の変更等
- 事業主の命による転勤又は出向に伴う別居の回避
- 配偶者の事業主の命による転勤若しくは出向又は配偶者の再就職に伴う別居の回避
- その他、「早期退職優遇制度」ではなく、単なる人員整理の希望退職者の募集に応じて離職した者等
引用元:ハローワーク 特定理由離職者の範囲
ハローワークの記載内容をそのまま引用すると、どうにもややこしいですね。
かみくだいて解説すると、以下のような理由で会社を辞めたときに特定理由離職者と認められる可能性があるということです。
- 契約社員として仕事をしていたが、契約を更新できなかったとき
- 病気などで体調を崩し、会社に勤めるのが困難になったとき
- 両親の介護など、家庭の事情が変わったことで会社に勤めるのが困難になったとき
- 勤務先のオフィスが移転して通勤2時間以上かかるようになってしまったとき
- 転勤や出向を命じられたものの、配偶者との別居を受け入れられないとき
- 結婚して通勤が困難なほど遠い場所に住むことになったとき
- 子どもを預ける保育所が近くになく、頼れる親族も近くにいないとき
- 毎日乗っていた電車やバスの路線が廃止になったことで通勤が困難になったとき
いずれも「そういう理由で退職したなら仕方ないですね。」と思えるものばかり。
「仕事がつまらなかったから」
「上司が嫌いだったから」
などの理由だと、特定理由離職者として認められることはまずありません。
3ヶ月の給付制限を耐え抜くか、1日でも早く転職先を見つけましょう。
特定受給資格者と特定理由退職者の違い
名称の似ている特定受給資格者と特定理由離職者。
両者のちがいをざっくりと整理すると、以下のように分けられます。
- 特定受給資格者:主に会社の事情で退職(ブラック企業など)
- 特定理由退職者:主に家庭の事情で退職(体調不良など)
厳密には家庭の事情以外の理由で退職した場合でも、特定理由退職者として認められる可能性があります。
認定されるかどうかはハローワークの判断
特定受給資格者と特定理由離職者の認定条件についてご紹介しましたが、認定されるためには事実関係の証明を求められます。
会社が倒産した場合などはすぐに調べられますが、給料の未払いや長時間残業については何かしら証拠となるものを提出しないといけません。
体調不良による退職の場合も、診断書などの提出を求められる可能性があります。
給付制限なしで失業手当を受け取れるかどうかはハローワークの判断次第なので、追加の提出資料を求められた場合は迅速に対応しましょう。
どういった形で証明すればよいのかについては、管轄のハローワークで相談してみてください。
ケガや病気が理由なら傷病手当金も活用を
先ほどご説明したとおり、ケガや病気を理由に退職した場合、特定理由離職者として認定される可能性があります。
ただ、まだ退職していないなら傷病手当金を活用できるかもしれません。
傷病手当金とは、病気やケガで働けなくなったときに一定のお金を受け取れる制度で、申請先はハローワークではなく全国健康保険協会。
ポイントを整理すると、以下の通りです。
傷病手当金 | 失業保険 | |
---|---|---|
申請先 | 健康保険 | ハローワーク |
給付制限 | なし | 自己都合退職は3ヶ月 |
待機期間 | 3日間 | 7日間 |
受給期限 | 受給開始から1年6ヶ月以内 | 離職から1年以内 |
国民健康保険には傷病手当金という制度がないため、残念ながらフリーランスの方や自営業者の方は利用できません。
傷病手当金について詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
退職したら早めに失業手当の申請手続きを
特定受給資格者または特定理由退職者として認定されるかどうかで、自己都合で退職した方が失業手当を受け取れるタイミングは大きく変わります。
通常の手続方法だと、お金を受け取れるのは約3ヶ月後。
自己都合で退職した方は、該当の条件に認定するかどうかぜひチェックしてみてください。
ただし、給付制限なしで受け取れることになったとしても、もともともらっていた給与の半分程度しか支給されないこともあります。
失業手当はあくまで最低限の生活ができるだけの金額しか受け取れないので、過度な期待は禁物です。
体調を崩していたり、ケガをされてる方は回復に専念すべきですが、体が元気な方は1日でも早く次の仕事を見つけましょう。