最近では優秀な人材を確保し、従業員のモチベーションを向上させる目的で、副業を解禁する企業が徐々に増えてきています。
副業を行えば確かに収入は増えますが、良いことばかりではありません。
副業にはデメリットや、注意しておきたいポイントもあります。
ここでは副業OKの企業に転職する際の注意点を解説します。
会社員が副業をはじめるメリット
副業を行うことには、もちろんメリットもあります。
どのようなメリットがあるか、解説していきましょう。
家業を継げる
実家が農家や商店など、先祖代々の職業を持っている方もいます。
この場合、いくら優秀な人でも家業を継がざるを得ない場合も少なくありません。
しかし会社で副業が認められれば、家業を手伝いながらあなたのやりたい仕事を行うことができます。
家族や親戚との関係性もよくなり、本業でのモチベーションのアップにつながることもあるでしょう。
視野が広がる
副業を行うことは、今までとは違う視点で仕事に取り組むことを意味します。
そのため本業では得られない気づきがあるなど、視野を広げる効果があります。
本業で経験しにくいスキルアップができる場合もあります。
またこのことを本業に生かすことで、能力や業績のアップにつなげることも期待できます。
収入が増える
副業を行うことで、収入が増えることも期待できます。
特に副業でも従業員として雇用される場合、最低賃金法の適用を受けます。
少なくとも最低賃金分の収入は保証されることとなります。
不労所得を得られる場合も
あなたが地主で、賃貸物件を持っている場合がこれに当てはまります。
誰かに賃貸物件を貸せば、入居している間は何もしなくても自動的にお金が入って来ます。
もちろん物件に何かトラブルがあれば対応しなければなりませんが、会社に雇用されて働くことと比較すれば楽といえるでしょう。
会社員の副業はデメリットもある
副業を行う際には、デメリットもあります。
なかには重要な項目もありますので、注意が必要です。
無条件で副業を認めている会社は少ない
従業員が副業を行うことは、会社にとって以下のリスクがあります。
- 長時間労働により疲労がたまり、本業の業務に支障が出るおそれ
- 他社に企業秘密が漏えいするおそれ(秘密保持義務違反)
- 競合企業と仕事を掛け持ちされるおそれ(競業避止義務違反)
- 副業を行うことによって、会社の評判を落とすおそれ
最後の「副業を行うことによって、会社の評判を落とすおそれ」は、例えば「自社の従業員が副業としてAV男優の仕事をしていた」というケースが該当するでしょう。
このため副業は無条件で認められるケースは少なく、そもそも許可制である場合が多いです。
また会社によっては、農業等の自営業は副業として認めるものの、他社に雇用されることは一切認めない場合もあります。
給与水準を下げる企業もあるので要注意
従業員が副業や兼業を行えば、従業員1人当たりに支払うべき給与は少なくなる可能性があり、人件費削減につなげられる可能性があります。
また業績不振の企業の場合など、給与水準を下げる見返りとして副業を認める場合もあります。
このため、副業OKだからといって手放しで喜ぶわけにはいきません。
長時間労働になる場合が多い
例えば週5日、1日8時間労働を行っている人が副業を始めれば、その時点から法定労働時間を超えてしまいます。
いわば副業で働いた分だけ残業になってしまうようなものです。
ここまででなくても、週30時間労働の人が法定労働時間内に納めるためには、副業は週10時間以内にしなければなりません。
しかし、特に収入を得ることが目的の場合は、可能な限り働くという人も多いのではないでしょうか。
このため副業をしている人は、長時間労働になる場合も多いでしょう。
またこれにより疲労がたまり、本業への支障が発生することも少なくありません。
業務委託は最低賃金の保証や残業代が無い
皆さまのなかには、在宅ワーク等を副業として稼ぐことを考えている方もいるでしょう。
自宅にいながら稼げることは、特に育児中や家族を介護している人にとって、収入を得る有効な手段です。
しかし、業務委託契約の場合は成果に対して報酬が払われることに注意しなければなりません。
つまり、いくら時間をかけても支払われる報酬は同じです。
このため、最低賃金の保証や残業代が無いことには注意が必要です。
副業OKの企業に転職するときの注意点
あなたの志望する企業が副業OKであったとしても、転職する際に注意しておきたいポイントがいくつかあります。
この点について解説します。
労働時間は本業と副業で通算される
副業を行っていた場合、労働時間は本業と副業で通算されます。
この場合、勤務できる時間は以下の通りとなります。
- 三六協定を締結していない場合は、法定労働時間まで(週40時間)
- 三六協定を締結している場合は月45時間まで、かつ年間360時間まで超過勤務が可能
年間を通して副業を行う場合、超過勤務が可能な時間は月30時間となります。
実際には、本業とあわせて月200時間程度までということになるでしょう。
残業代はどちらが払うか
副業を行っていた場合、本業と副業を通算した労働時間での残業代は支払われないことが現実でしょう。
本来は本業と副業を通算して法定労働時間を超えた場合は、残業代を支払わなければなりません。
しかしどちらの会社が支払うべきかについては、専門家の間でも以下のように見解が分かれています。
- 1日のうちで、後の時間に勤務する会社が残業代を支払う
- 勤続年数の少ないほうの会社が残業代を支払う
このため、入社時によく確認しておきましょう。
社会保険や雇用保険はどちらで加入するか
健康保険や厚生年金、雇用保険の場合は、当然のことながら本業か副業どちらかの会社でしか加入できません。
この場合、月々の保険料は以下の金額となります。
- 健康保険や厚生年金は、本業と副業の報酬月額を合計して決定する
- 雇用保険は、本業の給与のみで決定する
厚生労働省のワークシェアリング導入のための検討ガイドには以下のように記載されています。
他社での兼業を認めた場合に、実務的な課題となるのは社会保険の取扱いであろう。
厚生年金・健康保険は、兼業先でも被保険者資格を有する時は、給与を合算して加入することになる。
事例では、事業所を選択して厚生年金や健康保険に加入することになる。
この場合、雇用保険についても、従前の事業所で加入することになるが、給与は合算しない。
健康保険や厚生年金については、本業の会社を経由し、健康保険組合と日本年金機構に対してそれぞれ届け出をする必要があります。
日本年金機構への届け出は「健康保険・厚生年金保険 所属選択・二以上事業所勤務届」となります。
但し健康保険が全国健康保険協会(協会けんぽ)の場合は、日本年金機構に対して提出すればまとめて手続きできます。
なお週当たりの労働時間が20時間未満である場合は、健康保険、厚生年金、雇用保険いずれの対象にもなりません。
労災について注意すべきポイント
副業を行う場合は、労災についても注意すべきポイントがあります。
それは、1日のうちで本業と副業、両方に携わる場合です。
この場合は職場の移動が発生しますが、もし移動中に通勤災害が発生した場合は、以下の扱いとなります。
- 本業の職場から副業の職場へ移動中の場合は、副業の労災を使って補償
- 副業の職場から本業の職場へ移動中の場合は、本業の労災を使って補償
このように、「これから向かう職場の労災」を使うことになります。
副業の労災は本業の労災よりも受けられる補償が少ない場合が多いですから、この点を頭に置いておく必要があります。
副業に関する会社の規定をチェック
副業OKの会社に転職する場合、副業をほぼ無条件で認める会社は少なく、何らかの制約を設けている場合が多いものです。
そのため、事前に確認できるようなら副業に関する会社の規定をチェックしておきましょう。
あるいは面接等の際、あなたがやりたい副業ができるかどうか、相談することも良い方法の1つです。
副業OKの会社へ転職する際は条件の確認を
ここまで副業のメリット・デメリットと、注意すべきポイントについて説明してきました。
副業で収入が増えることはメリットですが、どうしても長時間労働になってしまうことはデメリットです。
また誰でもできるとは限らず、さらに給料を下げる見返りとして副業を許可する場合もありますから注意が必要です。
副業OKの会社に転職する場合は条件をよく確認する必要があります。
また副業で働く場合は本業に支障がないよう、体を休める時間も考えた上で労働時間を決めることが大切です。
無理をして働きすぎてしまい、本業で力を発揮できなくなるようなことは避けましょう。
あなたの仕事選びがうまくいくことを願っています。