「営業でキャリアアップしたいから、同業他社への転職も視野に入れたい」
「ライバル会社のほうが条件はいいけど、会社から訴えられたりしないか心配」
営業職として転職する場合、同じ業界のライバル会社は有力な転職先候補になりえます。
しかしながら、競業禁止などを気にして一歩を踏み出せない人も少なくありません。
結論を先にお伝えすると、同業他社への転職が大きな問題に発展することは少ないです。
ただし、注意すべき点があるのも事実。
このページでは、同業他社の営業に転職するときの注意点について詳しく解説します。
転職を視野に入れている方は、ぜひ参考にしてみてください。
同業他社の営業へ転職をおすすめする理由
「やっぱりまったく別の業種へ転職したほうがいいのでは・・・」
と心配する気持ちは理解できます。
それでも同業他社への転職をおすすめする理由は、メリットが大きいから。
主なポイントは以下の2点。
- 即戦力で活躍できる可能性が高い
- キャリアアップにつながりやすい
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
即戦力で活躍できる可能性が高い
同業他社への転職をおすすめするひとつめの理由は、即戦力で活躍できる可能性が高いという点です。
多くの企業が中途採用に期待しているのは即戦力人材。
未経験者を採用することもありますが、教育には時間もお金もかかります。
その点、同業他社で経験を積んでいた人材は商品・サービスの基礎知識が身についているため、少なくとも基本的な教育の手間は省けます。
もちろん仕事の進め方は各社さまざまですし、上司や同僚との相性なども影響するため、経験者を採用したところで100%活躍できる保証はありません。
それでも、未経験者を採用するより失敗のリスクは確実に減ります。
別の職種を目指すこともできる
「転職はしたいけど、そろそろ別の職種も考えてみたい」
と考える方にとっても、同業他社への転職は活躍できる可能性が高いですよ。
業界動向やクライアントのニーズを把握しているでしょうから、新しい商品やサービスを生み出す企画・マーケティング関連への転職も視野に入れてみてもよいでしょう。
組織を作っていくことに興味があるなら、人事・総務部門で採用担当として働くという道もあります。
「営業と人事はまったく別の畑なのでは?」
と思われがちですが、まったくの偏見です。
優秀な人材を採用するためには、候補者が転職先に何を求めているかを的確に把握して、自社の魅力をアピールしないといけません。
やっていることは、まさに営業行為そのもの。
採用担当として働くときも、業界の動向や各社の特徴を把握している強みをそのまま活かせますよ。
キャリアアップにつながりやすい
もうひとつの理由は、あなた自身のキャリアアップにつながる可能性が高いという点。
キャリアアップという言葉は人それぞれ意味が異なりますが、営業職の場合、個人の成績が昇給や昇進に直結することも少なくありません。
新しい職場とあなたの強みがうまくマッチすれば、年収が100万円以上アップすることも不可能ではないでしょう。
チームのリーダーとして活躍していたなら、より大きな部署の責任者を任されるかもしれませんね。
同業他社への転職は、前職での経験をそのまま活かせます。
取り扱う商材が変わるだけで、クライアントとのコミュニケーションに大きなちがいは生まれません。
担当者との距離の詰め方やニーズの引き出し方、値段交渉のコツなど、今まで身に着けたノウハウをそのまま活かせるでしょう。
場合によっては前職で付き合いのあった取引先から、転職先でも引き続き仕事をお願いされるかもしれませんね。
「営業としてもっと上を目指したい!」
と考えるなら、同業他社という選択肢を真剣に考えてみるべきですよ。
同業他社へ転職するときの法的な問題点
「同業他社ならたしかにすぐ活躍できそうだけど、トラブルになりそう・・・」
「今までお世話になった会社を裏切る行為になるし、訴えられたら嫌だ・・・」
と心配するのも無理はありません。
ただ、冒頭でもお伝えしたとおり、問題に発展することは稀です。
しかしながら、100%問題ないとも言い切れません。
どういった点に気をつければいいのか、詳しく見ていきましょう。
基本的に職業選択の自由が優先される
職業選択の自由という言葉を聞いたことはありますか?
日本国憲法の第22条を見ると、以下のように明記されています。
日本国憲法第22条第1項
何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。引用元:厚生労働省 憲法22条に規定する職業選択の自由について
個人の働き先はすべて個人の自由であるということ。
だからといってライバル会社への転職がまったく問題ない、というわけではない点に注意してください。
競業避止義務規定の有無を要確認
日本国憲法で職業選択の自由が定められていたとしても、たとえば前職の機密情報を流出させたり、取引先をすべて奪った場合、さすがに問題に発展する恐れがあります。
まずチェックすべきは、今まで働いていた職場の就業規則。
就業規則に「従業員は退職後 ○ ヶ月間、競合他社への転職及び競合する事業を営むことを禁止する」などの文章が明記されているかを探してみてください。
これは競業避止義務規定と呼ばれるものです。
競業避止義務とは、自己または第三者のために、営業者の営業と競争的な性質の取引をしてはならない義務のこと。
引用元:経済産業省 競業避止義務契約の有効性について
どのような会社も自社の利益を奪われたくありませんから、競合他社への転職を就業規則で禁止しているケースは多いです。
退職時にサインを求められることも
「就業規則には何も書いてなかったから大丈夫そう」
と安心するのはまだ早いです。
会社によっては、退職時の手続きの一環として誓約書などにサインを求めてくることがあります。
競業避止義務に同意してしまうと、後々トラブルに発展する可能性が高まるので要注意です。
就業規則に競業避止義務規定がなく、退職時も書面上のやりとりがなければ、同業他社への転職を気にする必要はありません。
元上司や同僚から妬まれる可能性はありますが、所詮は他人です。
最優先で考えるべきことは、あなた自身が幸せになれるかどうか。
トラブルの回避方法など、より詳しく知りたい方は以下の記事も合わせてご覧ください。
希望の条件で内定を勝ち取るためのコツ
「せっかく転職するなら年収は○万円を目指したい」
「より重要なポジションで働ける会社に転職したい」
転職するなら、少しでも良い条件で働きたいですよね。
しかしながら、同業他社への転職は活躍できる可能性が高いものの、必ず内定をもらえる保証なんて一切ありません。
それに、年収が下がってしまったり、条件面が悪くなる可能性だってゼロではないのです。
どれだけあなたが優秀な営業だとしても、希望の条件で転職するためには事前準備が大切。
具体的にどのような点に注意すればいいのか、順に見ていきましょう。
転職活動は退職前から準備をはじめる
あなたにとって理想的な転職活動とは、どのようなものですか?
「転職活動がダラダラと長引いて、貯金が日に日に減っていく・・・」
なんてことは絶対に避けたいですよね。
理想は、内定をもらえた状態で退職すること。
有給消化や引き継ぎも考えると、退職日の2〜3ヶ月前から動き出すのがベターです。
やむを得ない事情ですでに退職しているのなら、1日でも早く転職先を見つけられるように頑張るしかありません。
転職活動に限った話ではありませんが、何事も準備には時間をかけたほうがいいですよ。
失業手当をあてにするのは危険
「貯金はあまりないけど、失業手当をもらえるから大丈夫でしょ?」
と考える人も多いですが、考えが甘いです。
自己都合による退職は、お金を受け取れるまで約3ヶ月かかります。
ただし、給与未払いや長時間残業などの事実があれば、すぐに失業手当を受け取れるケースもあります。
さらに、受け取れる金額は今までもらっていた給与の半分〜2/3程度。
最低限の生活ができる程度しか受け取れないため、失業保険に過度な期待は禁物です。
複数の企業の選考を同時進行で進める
より条件の良い会社で働きたいなら、複数の企業の選考を同時進行で進めることも大切です。
今まで新規営業がメインだった方なら、相見積りを取られることも多かったことでしょう。
転職先を選ぶときも同じように、選択肢をいくつか用意できたほうが失敗しません。
少なくとも1社から内定をもらえれば、「転職先が見つからなかったらどうしよう・・・」という不安も解消されます。
「A社からは年収○万円を提示されているので」
複数の内定をもらっていれば、条件交渉も有利な立場で進められますよ。
いくつもの選考を同時で進めるのは日程調整やタスク管理が大変ですが、より希望に近い転職先と出会うためにも踏ん張りましょう。
過去の実績や成果を具体的にアピール
書類選考を突破して面接まで進めたなら、今まで営業として積み重ねてきた実績をアピールできるように準備しましょう。
企業によって採用基準が異なるように、営業職に期待するスキルも会社ごとにさまざま。
どれだけの売上を上げたのか、という情報だけではなく、どういったプロセスで成果を上げたのか、具体的に伝えることを意識してください。
営業のスタイルは飛び込みやテレアポがメインなのか反響営業が中心なのか、チームで動いていたのか個人だったのかなど、伝えるべき情報はたくさんあります。
アピール方法を間違えるとあっさりと不合格にされる可能性もあるため、選考を受ける企業のことをよく調べた上でどのようにアピールすべきか対策を練りましょう。
条件交渉が苦手ならプロに任せる
「本当はもっと高い年収がいいけど、強気に交渉したら断られそう・・・」
条件交渉は転職活動の最後の山場。
希望通りにまとまれば万々歳ですが、下手をすると内定を取り消されたり、あなたへの印象が悪くなってしまうことも。
交渉に苦手意識を持っているなら、はじめから転職エージェントを通しておくことをおすすめします。
転職エージェント経由なら希望も伝えやすいですし、うまく交渉を進めてもらえます。
もちろん転職エージェントといえど万能ではありませんから、必ずしも希望が通るとは限りません。
非公開求人を紹介されたり、職務経歴書の書き方についてアドバイスをもらえるなど、何かと便利なサービスなので利用しておいて損はありません。
面接が苦手な人も事前に対策できる
「営業には慣れているけど、面接になると緊張する・・・」
という人も多いですね。
どれだけ魅力的な求人と出会えても、面接を突破できないことには意味がありません。
面接に苦手意識がある人も、あらかじめ転職エージェントで対策しておくことをおすすめします。
退職理由の伝え方や自己アピールで話すべきポイントなど、具体的なアドバイスをもらえますよ。
ただし、転職エージェントの利用にはちょっとコツがいります。
今まで1社も使ったことがない方は、登録を申し込む前に以下の記事を読んでおきましょう。
同業他社に転職してキャリアアップを
同業他社への転職は、競業避止義務が気になるポイントですよね。
重要な顧客リストを持ち出したり、取引先を奪うなど、前職に損害を与えたりしない限り、ほとんどの場合、職業選択の自由が優先されます。
どうしても心配なら、相応の費用はかかるものの、早めに弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。
同業他社の経験者を採用することは、企業側にとっても大きなメリットがあります。
教育コストを削減できて、ライバル企業の営業ノウハウや内部事情を取り込めるからです。
うまく条件がマッチすれば、キャリアアップも夢ではありませんよ。
今までの営業経験を活かして、より良い職場への転職を希望するなら、同業他社への転職を真剣に考えてみましょう。