前職を好ましくない理由で退職した場合、なんとか印象を良くするため、嘘の退職理由を作って回答したくなるものです。
しかし、面接で嘘を答えてはいけません。
退職した理由を整理し、表現を工夫して、正直に伝えることが基本です。
ここでは退職理由についてどう説明すべきかを解説していきます。
面接で退職理由を聞かれても嘘は禁物
面接で退職理由を聞かれた際、嘘を答えてはいけません。
その理由はなぜなのか、順に説明していきます。
応募書類や前回の面接との食い違いを指摘される
面接では、必ず退職理由を聞かれます。
採用担当者は応募書類を見ながら面接を進めていますから、もし嘘の退職理由を書いていたら、書面の内容と口頭での回答で食い違いが発生することになります。
この場合、書類の内容と食い違う理由を尋ねられます。
また複数回面接がある場合、前回で回答した内容と異なった場合についても、その食い違いについて説明するように求められます。
いずれも納得いく答えができなければ、不採用となるでしょう。
前の職場に電話で確認されることもある
前歴調査と称して、前職の職場に電話で確認する場合もあります。
個人情報保護法により、このような問い合わせに回答する企業は少なくなりましたが、ゼロとはいえません。
万が一面接での回答内容と食い違いがあった場合は、不採用の原因となります。
入社時に前職の退職証明書の提出を求める企業もある
入社時に退職証明書の提出を求める企業もあります。
退職証明書には以下の項目のなかから、退職者が求めた事項が記載されます。
- 会社名
- 使用期間(在籍期間)
- 業務の種類
- その事業における地位
- 賃金
- 退職の事由(解雇の場合にはその理由を含む)
退職証明書に記載された内容と面接で回答した内容で食い違いがあった場合は、不採用の原因となります。
なお、労働基準法第22条及び第115条には、退職証明書について以下のように定められています。
労働者が退職する場合、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあつては、その理由を含む。)について証明書を請求した場合においては、使用者は遅滞なく交付しなければならない。
ただし、証明書には労働者の請求しない事項を記入してはならない。
また使用者は、あらかじめ第三者と謀り、労働者の就業を妨げることを目的として、労働者の国籍、信条、社会的身分若しくは労働組合運動に関する通信をし、又は第一項及び第二項の証明書に秘密の記号を記入してはならない。
法律の規定による賃金(退職手当を除く。)、災害補償その他の請求権は二年間、この法律の規定による退職手当の請求権は五年間行わない場合においては、時効によって消滅する。
この規定により、離職後2年間は離職者の求めに応じて、退職証明書を発行する義務があります。
退職証明書に記載する項目、記載しない項目は離職者が指定できますから、予め入社予定の採用担当者に確認してから請求しましょう。
承諾書を取って、調査会社に依頼する場合も
採用予定者から前職調査の承諾書を取り、調査会社に依頼する場合もあります。
調査料金は高額ですが、応募書類や面接での回答内容と事実との間に食い違いが無いか、最も確実に調査できる方法です。
もちろんここで虚偽記載などが発覚した場合は、不採用の理由となるでしょう。
また承諾書を提出しない場合は何らかのやましい点があるとみなして、不採用にする理由となりえます。
SNSや入社後の言動もチェックされる
嘘をつき通して見事入社できても、安心することはできません。
SNSをチェックされる場合もあり、面接で話した離職理由と異なることが書いてあった場合は、調査の上懲戒処分を受ける可能性があります。
また入社後の飲み会等で「実は辞めた理由は懲戒解雇で」となったら大変です。
これも調査を受け、懲戒処分を受ける可能性があります。
嘘はダメでも伝え方を工夫することは必要
ここまで説明してきた通り、面接で退職理由を回答する際、嘘を述べることはいけません。
しかし、工夫次第で採用担当者に良い印象を与えることはできます。
どのように工夫すれば良いか、説明していきましょう。
退職した理由を整理してみよう
多くの場合、退職した理由は1つではなく、複合的な理由があると思います。
そのため、退職と関連のある理由を整理することが大切です。
書き出してみると、今まで気づかなかった「真の退職理由」が見つかるかもしれません。
無理なく説明できる退職理由を使う
退職と関連のある理由がリストアップできたら、面接でなるべく良い印象を与える、かつ無理なく説明できる退職理由を使って文章を作ってみましょう。
できあがったら、本当にその理由が合っているか、自分自身に問いかけをしてみることが大切です。
この理由で良ければ応募書類に記入し、面接で答えるようにしましょう。
もし納得がいかない理由なら、納得いくまでこの作業をやり直す必要があります。
退職理由の伝え方で面接の合否が変わることも
退職理由は、採用試験の合否に大きな影響があります。
少なくとも仕事に前向きであること、そしてすぐに辞めてしまう人材でないかどうかをチェックする目的があります。
そのため退職理由の伝え方次第で、面接の合否が変わることもあります。
この退職理由の伝え方は、前職をどのようにして辞めたかによって異なります。
それぞれについて、詳しく説明していきましょう。
自己都合退職の場合
自己都合退職の場合は、たとえ会社からのすすめに応じて離職したとしても、形式上はあなたの意思で離職したことになっています。
そのため、退職理由の伝え方には工夫が必要です。
このケースは、離職した会社と同じ職種に応募するのか、それとも違う職種に応募するのかで取るべき対応が分かれます。
離職時と同じ職種に応募する場合
この場合は、回答にあたって工夫が必要です。
離職した会社であなたが持っていた不満は何だったのかが、採用担当者を納得させる鍵となります。
それはパワハラでしょうか、労働環境でしょうか、あるいはやりたい仕事ができなかったからでしょうか。
この点について、きちんと整理しておく必要があります。
そして面接では、前職のままでは得られないメリットが応募先にはあるということを、きちんと示す必要があるでしょう。
少なくとも採用担当者に「この人はまたすぐに辞めてしまうのではないか」という疑念を持たれないように、回答を工夫する必要があります。
離職時と異なる職種に応募する場合
いわゆる「離職を機に、仕事を変える」場合です。
この場合は、同じ職種に応募する場合とは異なります。
今までの仕事を続けられないと思った理由を述べると良いでしょう。
その後、新しい職種や仕事を選んだ理由を必ず聞かれますから、これにもきちんと答えることが重要です。
なお回答にあたっては、「この人は困難な場面ではすぐに逃げる人」と思われないよう、工夫する必要があります。
普通解雇や会社都合退職などの場合
普通解雇など会社都合で離職した場合、退職理由の伝え方は一見難しそうですが、実はそうでもありません。
なにしろあなたは仕事をしたいのに、会社の都合で一方的に仕事を取り上げられてしまったのです。
ですから、応募書類でも面接でも、仕事を続けるための努力をしてきたということを示しましょう。
もっともこれに関連して、仮に整理解雇であったとしても、あなたの能力が低いから辞めさせられたのではないかという質問が来るかもしれません。
この点については離職中も努力を重ねている等、質問に対する回答を考えておく必要があるでしょう。
契約満了の場合
この場合は、単に事実を回答すれば良いでしょう。
なお、「契約の更新は希望したの?」というような質問が来るかもしれません。
その場合は、更新を希望した、又は希望しなかった理由を述べる必要がありますから、予め考えておきましょう。
重責解雇の場合
この場合は、正直に説明する他ありません。
過去の過ちを深く反省し、再出発する覚悟を示しましょう。
退職理由で嘘を突き通すのはリスクが高い
ここまで、面接で嘘の退職理由を伝えると不利になること、またうまく伝えるにはどのような工夫が必要かという点について解説してきました。
嘘をつき通すのは、なかなか難しいものです。
それも採用試験の段階で不合格になればまだ良いですが、入社後に判明したら大変です。
懲戒処分を受けたり、場合によっては離職を余儀なくされることもあり得ます。
なにしろどこで嘘が発覚するかわかりませんから、日々注意を払って勤務しなければなりません。
この精神的な苦労は大変なものですから、最初から伝え方を工夫し、正直に伝えることが良い結果に結びつきます。
ところで、退職理由をうまく伝えるためには、離職した理由を整理することが重要です。
志望動機ともリンクする内容ですから、できるだけ前向きな理由を述べられるように工夫しましょう。
もちろん、あなた自身が納得いく理由であることは必須です。
このようにすれば自信を持って退職理由を伝えることができ、採用を勝ち取ることができるでしょう。