あなたは、退職届を出しても会社都合退職にできる場合があることをご存知ですか?
長時間残業で身体が耐え切れなくなり離職する場合は、これに該当する1つのケースです。
但し、実際に会社都合退職を勝ち取るためにはポイントがあります。
この記事で、自己都合退職から会社都合退職にする方法を確認していきましょう。
長時間残業の証拠があれば会社都合退職になる
離職の直前6か月間のうち残業時間が以下のいずれかの基準に達した場合は、特定受給資格者として取り扱われます。
いわゆる会社都合退職と同じ扱いとなり、失業給付などで有利な扱いを受けられます。
- 残業45時間を超える月が3ヶ月続いた場合
- いずれかの月の残業が100時間を超えた場合
- 連続した2か月以上の期間について、平均した残業時間が80時間を超える場合
なお特定受給資格者として認められるためには、長時間残業を証明するものが必要となります。
長時間残業の証拠を集める方法
さて、このような残業の事実があったとしても、会社都合退職にするためには証拠が必要です。
残業時間の記載がある書類に上司の捺印があれば、それをコピーするのが理想です。
しかし、そうもいかない場合もあるでしょう。
そもそも残業は自己責任とばかりに、故意に残業を少なくした書類を作成するよう命ぜられる場合すらあります。
このため次善の策として、手帳などに出勤・退勤時刻を記入することも有効です。
またスマートフォンアプリで出勤・退勤を記録できるアプリもありますから、利用すると良いでしょう。
出勤・退勤途上で何か買い物をされる習慣がある方は、お店のレシートを取っておくことも有効な方法の1つです。
また証拠とは別に、日々の出退勤時刻を一覧表にしておくことも必要です。
長時間残業の事実を主張する方法
長時間残業が理由で離職した場合、渡された離職票2の事業主記入欄には多くの場合「自己都合退職」と書かれていると思います。
離職票2には離職者の記入欄もありますから、以下のように記入しましょう。
- 5(1)①の「労働条件に係る問題があったと労働者が判断したため」に○をつける
- 具体的事情記載欄(離職者用)に、離職理由となる具体的な時間外労働の状況を記入する
- 「事業主が○を付けた離職理由に異議」の欄にある「有り」を○で囲む
あとは以下の書類を持ってハローワークの窓口へ行くと、事情を聞いてくれます。
- 時間外労働の証拠(一番大切です)
- 離職票1と2
- 個人番号確認書類(個人番号カード、個人番号通知カード、個人番号が記載された住民票のいずれか)
- 印鑑(認印で可)
- 通帳(失業給付は銀行振込ですので、通帳またはキャッシュカードが必要です。ゆうちょ銀行でも可)
- 写真2枚(最近撮影した写真で、縦3cm、横2.5cmのもの)
- 本人確認書類(写真つきは1枚、写真無しは2枚)
もっともハローワークの窓口担当者は、日々多くの申請を受け付けていますから、個々の件に対してあまり時間は取れません。
これは、明確な証拠がないと自己都合退職を会社都合退職に変更することは難しいということを意味します。
申請のチャンスは1回しかありませんので、可能であれば労働関係の弁護士などに相談することも良いでしょう。
退職した会社に労働基準監督署の監査と指導が入る場合もある
ハローワークで離職理由を会社都合退職にしてもらうことと併せて、労働基準監督署に情報提供することも一つの方法です。
長時間労働の証拠が出た場合、その状況によって労働基準監督署の監査と指導が入ることがあります。
残念ながらこれまでの悪い待遇を取り戻すことはできませんが、今後の改善に寄与する可能性はあるでしょう。
会社都合で退職することのメリット・デメリット
会社都合で退職することは不利と思われる方もいるかもしれませんが、一概にそうとも言えません。
メリットのほうが多いといえるでしょう。
会社都合退職になることでどのようなメリットを得られるのか、順を追って解説していきます。
失業給付は有利な条件で受給できる
会社都合退職の場合、失業給付を有利な条件で受給できます。
具体的には以下の通りです。
- 給付制限期間がなく失業給付を受け取れる(但し、7日間の待期期間は受け取れない)
- 雇用保険加入期間が半年以上あれば、失業給付を受け取れる
- 自己都合退職よりも給付日数が3割以上多い(但し30歳未満で加入期間が5年未満の場合は、自己都合と同じ日数)
なお以前は個別延長給付も受けられる場合がありましたが、この制度は平成29年3月31日付で廃止されました。
国民健康保険税が減額される
会社都合退職では、離職した当年度と翌年度の国民健康保険税を減免してもらえる制度を受けることができます。
対象者は保険税を算定する際、離職した前の年の所得を実際の3割だったものとみなして計算します。
この効果は想像以上に大きく、年間で20万円前後が減免される場合もあります。
この減免制度を受けるためには、ハローワークに失業給付の申込をした上で、「雇用保険受給資格者証」を発行してもらわなければなりません。
離職理由コードの数字が11、12、21~23、31~34のいずれかであれば、対象となります。
転職活動で不利にならない
会社は「会社都合で離職すると再就職できない」と言って、自己都合退職にするよう誘導することもままあります。
しかし、懲戒解雇でもない限り再就職できないことはありません。
また個人情報保護の観点から、再就職先からの前歴照会にも回答しない企業も増えてきており、このため前歴照会そのものをしない場合も少なくありません。
従って、安心して再就職活動に励むと良いでしょう。
応募書類作成には注意が必要
会社都合で退職した場合、応募書類の作成には注意が必要です。
会社都合退職なのに、履歴書に「自己都合により退職」と書いてしまったのでは虚偽記載になってしまいます。
かと言って、「会社都合により退職」や「解雇」と書く方法もあまり良いとは言えません。
ここは「入社」「退社」という言葉を使うと良いでしょう。
この言葉は、自己都合・会社都合に関わらず使えます。
過去にもマイカルが「退社・入社式」を行ったことがありますから、この表現を使うことに問題はありません。
イオン傘下での再出発が決まったスーパーのマイカルは、大阪と東京で「退社・入社式」を行った。東京地裁で更生計画案が認可されたことを受け、決意を新たにするため全社員がいったん退社、新しいマイカルに入社して再生に取り組む。
いずれにしても会社が気になれば面接の場で必ず聞いてきますから、その際に事情も含めて答えれば問題ありません。
残業ばかりのブラック企業からいち早く離脱を
ここまで、残業の多さが理由で会社都合退職を勝ち取る方法と、そのメリットについて説明してきました。
ブラック企業を辞めることは、あなただけではなく、社会のためでもあります。
現代は人手不足倒産という言葉も聞かれるほどの求人難が続いています。
ブラック企業から離職が続き、代わりの人が誰も入社しなければ、その会社は事業が立ち行かなくなるでしょう。
残される人のことは、会社がなんとかしますから考える必要はありません。
またブラック企業が人手不足倒産することは、働くに値しない企業がなくなることですから、社会にとって好ましいことです。
従って市場からブラック企業に退場してもらうためにも、いち早く離脱することが望ましいといえるでしょう。
長時間残業が続いている方は、会社都合退職で会社を辞めることを検討してみてはいかがでしょうか。