上司に退職の意思を伝えると、慰留される方は多いでしょう。
それが形式的なものである場合や、たとえ説得されても最後には「それほど意思が固いなら仕方がない」という場合は問題ありません。
しかし退職の意思を示したことで、罵倒や暴言を浴びせてくるような場合は問題です。
上司から罵倒を浴びせられるような会社から退職するにはどうすればいいのか、対処法をご説明します。
退職しようとすると浴びせられる罵倒の事例
残念ながら、退職しようとすると罵倒の言葉を浴びせられるケースは少なくありません。
実際に上司から浴びせられた罵倒の例として、インターネット上で報告されているものピックアップしました。
- お前1人が逃げていい思いをするなんて無責任だ
- 周りのみんなを見捨てるのか
- このぐらいは社会人として当たり前
- お前のような根性無しはどこに行っても通用しない
- 辞表を破る
- 辞めるなら懲戒解雇にする
- お前をどこにも就職できないようにしてやる など
これらはほんの一部で、ネットに書き込まれていないものも含めると、数え切れないほどの例があると予想できます。
「法律よりも就業規則が優先」という詭弁
このような企業で「法律に従って辞めます」と宣言しても、以下のような言葉を浴びせられることになる場合もあるでしょう。
- 法律なんかみんな守っていない。残業代なんか払っている会社は無いぞ
- 給料をもらえるだけありがたいと思え
- お前は世間知らずだ。うちの会社でもっと勉強しろ
このようなことは、ちょっと調べればどちらが世間知らずかすぐにわかる話です。
犯罪にあたる行為をしてくる会社もある
ここまでの言動だけでも十分に問題がありますが、退職を希望する従業員に以下のような行為をする上司もいるようです。
- 暴力をふるう
- 監禁して、退職の意思を撤回するまで出さない
- 辞めるなら毎月金を振り込め
ここまで来ると、もはや犯罪といっていいでしょう。
また以下のような発言は、契約社員の契約期間中である場合を除き、強制労働にあたる可能性があります。
- お前は辞められない
- 代わりが見つかるまで辞めさせない
このような発言は労働基準法に違反する可能性があり、10年以下の懲役という厳しい罰則も用意されています。
第五条 使用者は、暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段によつて、労働者の意思に反して労働を強制してはならない。
第百十七条 第五条の規定に違反した者は、これを一年以上十年以下の懲役又は二十万円以上三百万円以下の罰金に処する。
このような発言があった場合は、弁護士などの専門家や警察などに相談しましょう。
警察が動くかどうかはともかく、状況次第では損害賠償を請求できるかもしれません。
できればこのような発言が予想される時点で、会話を録音できるよう準備をしておくと証拠となり、後日あなたにとって有利な材料となります。
会社や上司が退職希望者を罵倒する理由
会社や上司があなたを罵倒するには、もちろん理由があります。
「敵を知る」ことも戦略の1つですから、その理由について少し考えてみましょう。
自身の責任問題になることを回避したい
人が1人退職すると、その上司の力量に問題がある等、責任問題になる可能性もあります。
また誰かを採用しなければならなくなります。
これは特に人手不足の職場では深刻な問題になり得ます。
さらに、採用できた人でもあなたと同じようなパフォーマンスを発揮できるかどうかはわかりません。
特にその職場が低賃金で、あなたが良く働く人であれば要注意です。
代わりの人を採用できたとしても、あなたよりも能力が低いということは十分あり得ます。
この手間に比べれば、罵倒してでも引きとめられる程度の手間ですめば安いものといえます。
実は上司自身が会社を辞めたがっている
このような会社は、実は上司も辞めたいと思っているのかもしれません。
しかし上司は責任ある立場にありますから、そうそう代わりを見つけるわけにもいかないでしょう。
もしくは退職することになると、経営層から苛烈なプレッシャーがあるという場合もあります。
そんな上司は辞める部下に対し、うらやましいと思っているかもしれません。
「俺の部下のくせに、俺よりもいい思いをしやがってこの野郎」などという気持ちもあるでしょう。
退職強要と強引な引き止めは表裏一体
強引な引き止めをするくらいならば、社員を大切にする会社であるかというとそうでもありません。
むしろ、退職強要と強引な引き止めは表裏一体といえるでしょう。
それは、会社側の考えが以下のようなものであるためです。
- 会社の役に立つ従業員ならば、文句を言わずずっと勤務し続けるべきである
- 会社の役に立たない従業員ならば、自らすすんで退職するべきである
極端な場合、ある社員には強引な引き止めをして、別の社員には退職を強要するという場合もあるかもしれません。
会社の意向に沿わないことに対して「自分勝手」と言うこともあるでしょう。
もちろんこのような考え方は、会社の都合しか考えない「自分勝手」なものであることは言うまでもありません。
会社を辞めたいあなたにできること
残念ながら、退職にあたって従業員にできることは限られています。
しかし、それは罵倒されたら退職できないという意味ではありません。
正しい知識をもって退職すれば、あなたは必ず会社を辞められます。
就業規則に沿わずとも退職届は出せる
どうしても上司が退職届を受け取らない場合は、会社宛てに「配達証明付きの内容証明郵便」で送る方法があります。
この方法であれば、会社に到達した時点で有効となります。
配達された事実は、あなたのもとに届く「郵便物配達証明書」で確認できます。
なお、内容証明で退職届を送る場合は以下の点に注意が必要です。
- 退職する旨の意思表示と、退職年月日のみを記入する(退職理由は書かない)
- 退職届は後日撤回できない
- 差出可能な郵便局は限られているので、予め確認しておく
上司からの罵倒や暴言は録音しておく
さきほどの説明の通り、退職届を提出する際に上司を通すことが必須ではありません。
そのため、上司に何度も退職したいと申し出て罵倒を受けるのは良い方法ではありませんから、交渉もほどほどにしたほうが良いでしょう。
この場合は、弁護士などの専門家が介入したほうが早く確実に退職できます。
また罵倒を受けたことによって慰謝料等を請求できる場合もありますから、後日に備えて会話を録音しておくことをおすすめします。
さらに役職が上の上司に相談してみる
上司より役職が上の上司に相談してみるという手もあります。
理解のある上司であれば、うまく退職の話がまとまることもあるでしょう。
その方が退職を了承し、直属上司には事後報告をするだけという場合は問題ありません。
しかし、その方が直属上司に「きちんと話を聞くように」などと指導するだけだと、かえって問題がこじれる場合もあります。
そのため、さらに上の上司に相談するかどうかは、慎重に判断したほうが良いでしょう。
弁護士や総合労働相談センターに相談
ここまでの説明の通り、上司の承認を得なくても会社を辞めることはできます。
上司や会社と交渉しても無駄な努力になりそうな場合は、早めに弁護士などの専門家や、総合労働相談コーナーなどの公的機関に相談すると良いでしょう。
会社もなるべくことを大きくしたくないと思っていることは同じですから、外部の人が介入すると、あっさり退職を認める場合もあります。
上司からの罵倒をくぐり抜けて迅速に退職を
上司や会社からどのような暴言、罵倒を浴びせられたとしても、退職できないということはありません。
就業規則に定められたルールに則っていないとしても、あなたが退職の意思を表示することによって会社を辞めることはできます。
自分ひとりの力で解決できそうにないなら、弁護士などの法律の専門家へ早めに相談することをおすすめします。
あなたが活躍できる場所はきっと他にありますから、上司からの罵倒をくぐり抜けて、新しい職場を探しましょう。
あなたらしく働ける場所と巡り会えることを願っています。