あなたの職場は必要経費をきちんと認めてくれますか?
「仕事の通話で今月も携帯代が1万円を超えた・・・」
と嘆く人は意外なほど多いです。
営業職をはじめ、取引先とのやりとりが多い仕事だと社用携帯が支給されないのはツラいですよね。
このページでは、一般的に会社が負担すべき経費の例と、経費を自己負担することの大きなデメリットについて詳しく解説します。
「○○って自己負担するのが普通じゃないの?」
と驚く方も少なくありません。
少しでも心あたりがある方は、ぜひ参考にしてみてください。
自腹で支払いがちな主な会社経費
そもそも経費とは何なのか、あなたはうまく説明できますか?
一般的な定義としては、ビジネスを成長させるため、売上を伸ばすために必要な費用のこと。
国税庁では以下のように定義されています。
必要経費に算入できる金額は、次の金額です。
- 総収入金額に対応する売上原価その他その総収入金額を得るために直接要した費用の額
- その年に生じた販売費、一般管理費その他業務上の費用の額
引用元:国税庁 やさしい必要経費の知識
厳密には会計上の経費と税務上の経費に多少の差はあるものの、ここでは深く取り上げません。
会計上の販売費及び一般管理費(販管費と略すことも多い)にはさまざまな項目がありますが、会社員として働く私たちが最低限知っておきたい項目は以下の通り。
- 旅費交通費
- 通信費
- 消耗品費
- 減価償却費
- 接待交際費
上記を踏まえた上で、自腹で払わされることの多い経費の具体例について詳しく見ていきましょう。
営業活動における交通費
営業職として働いている方だと、外回りは避けられません。
取引先との商談や打ち合わせは常に移動を伴いますから、公共交通機関の運賃や車のガソリン代などの費用は毎日のように発生することでしょう。
移動に伴う交通費は、本来なら旅費交通費として経費で精算されるべきです。
しかしながら、交通費の自己負担を強いている会社も一部存在します。
会社が交通費を支払ってくれないからといって、営業活動をサボるわけにもいかず、泣く泣く自腹を切っているケースも少なくありません。
常識的に考えてありえないことですが、新幹線や飛行機の移動まで自己負担だとしたら、あなたはそんな会社で働けますか?
携帯電話やスマホの通話料
プライベート用のスマホと仕事用のスマホ、2台持ちをしている人も多いですね。
外出先でも仕事をすることの多い職種だと、携帯電話やスマホは欠かせないアイテム。
クライアントと契約更新について交渉したり、急なトラブル対応に追われたり、ときには通話が長時間に及ぶこともあるでしょう。
通話料だけで毎月の携帯代が○万円になるなんて、考えたくもないですね。
会計上の勘定科目には通信費という項目があり、スマホや携帯電話の利用料は問題なく経費として計上できます。
本来ならば会社から仕事用の携帯電話が支給されるべきですし、スマホが一般化した現代において、セキュリティの面でもプライベート用と分ける必要性があるでしょう。
しかしながら、従業員に通話料を負担させている会社も少なくありません。
最新型のスマホは使えないとしても、せめて仕事で使った分の通話料だけでも支払ってほしいものですね。
事務仕事で使う文房具類
付箋やボールペン、蛍光マーカーなど、あなたは自腹で購入していませんか?
デスクワークの多い職種だと、クリアファイルやホッチキス、クリップなどの文房具を扱うことも多くなります。
文房具類もまた、消耗品費として計上できるはずの経費のひとつ。
そもそもボールペンやバインダーなどの文具類は、アスクルなどでまとめ買いすれば1つ数十円程度で購入できます。
法人が扱うお金の大きさから考えれば、文房具の購入費用なんて微々たるもの。
にもかかわらず文具の購入費用を従業員に自己負担させるなんて、どれだけケチくさい会社なのでしょうか。
「会社で支給されるボールペンはかわいくないから、自分の好きなものを買っている」
という場合であれば、多少の自己負担は仕方がありません。
仕事で必須のパソコン
パソコンも自腹で購入させられがちな代表例ですね。
「えっ、パソコンなんて会社から支給されるのが当然でしょ?」
と感じる方は、今までまともな会社にお勤めだったのでしょう。
以前、以下のニュースがネットで話題になりました。
人材サービスのビズリーチは4月、エンジニア・デザイナー職のスタッフを対象に、iMac Proを136台導入した。
iMac Proは、2017年12月に発売されたハイエンド向けのディスプレイ一体型のMacだ。
引用元:CNET Japan 1人約70万円の投資-ビズリーチがエンジニアらに136台のiMac Proを導入した理由
70万円のパソコンは極端な例ですが、一般的な事務用途なら1台10万円未満で十分なスペックのパソコンを購入できます。
今の時代、デスクワークをするうえでパソコンは必須。
通常、パソコンなどの機器は固定資産として計上され、耐用年数(一般的なパソコンだと4年)に応じて減価償却費として経費計上されていきます。
「入社日にノートパソコンを持ってきてください、もちろん自腹です」
なんてことを言われたら、今からでも遅くないので内定を辞退したほうがよいでしょう。
取引先との会食や接待の費用
「さすがに食費となると会社員じゃなくても必要だから、経費にできないのでは?」
と思われる方もいますが、取引先との会食をはじめ、仕事のための食事であれば経費として認められます。
5,000円がひとつの基準とされ、会計上は以下のように分けられます。
- 食事代が1人当たり5,000円以下の場合は会議費
- 食事代が1人当たり5,000円以上の場合は接待交際費
接待交際費として計上する場合は領収証が必須で、どこの誰と食事をしたのか記録を残しておくなどのルールもあります。
ただし、領収証を取ったからといって、ひとりで食べたランチ代などは経費にできません。
ちなみに、社内の忘年会や歓送迎会などの費用も会議費として経費計上は可能です。
上司とカフェで打ち合わせをしたときのお茶代も、もちろん経費にできます。
飲み会がある度に数千円の会費を集められていた方、まともな会社なら飲み代は全額会社持ちですよ。
自社商品を自腹で買わされる例も
「経費の自己負担だけなら、まだマシかもしれない・・・」
と思えるような会社が世の中にはたくさん存在します。
ひどい例だと、自社商品を従業員に自腹で買わせることも。
いくつかの例をあげながら、詳しく見ていきましょう。
恵方巻きやクリスマス商品の強制購入
恵方巻きのシーズンになると、コンビニやスーパーで「予約受付中!」といった広告を見かけることが多くなりますよね。
「今年は南南東を向いて食べなきゃ・・・」
という恵方巻きファンも一定数いますが、ノルマを達成できないと自腹で購入させられていたという事実は知っていますか?
もちろんすべてのコンビニやスーパーで起こっていたことではありませんが、なかにはアルバイトスタッフにまで強制購入をさせていた店舗もあるようです。
被害は恵方巻きにとどまらず、クリスマスケーキやおせち料理、土用の丑のうなぎまで。
ひとつならまだしも、クリスマスケーキを2個も3個も買わされるなんて、プレゼントを届けにきたサンタさんも腰を抜かすことでしょう。
日本郵便の年賀状やふるさと小包
自腹購入の例は恵方巻きより年賀状の方が有名かもしれませんね。
日本郵便においても、年賀状やふるさと小包の強制購入が行われていたことが一部のメディアで報じられました。
ノルマは7,000枚。彼はその日「親戚に売ってくる」とウソをついて、1,000枚の年賀状を局から預かり、一枚43円で金券ショップに売った。4万3000円を手にしたが、局には5万円を納めるので7,000円の自爆。これが7,000枚だと約5万円の自爆となる。(中略)
ノルマ未達成だと、上司の恫喝が待ち、昇進(非正規から正規など)や昇給のストップがちらつかされ、はたまた、ビール瓶をひっくり返した「お立ち台」に「こういう恥ずかしい社員がいる」と立たされて、全社員の前で「皆様の足を引っ張り申し訳ありません」と詫びを言わせられる。
引用元:日刊SPA! 郵便局にはびこる「自爆営業」 自腹10万円は当たり前
「ノルマ未達のペナルティを受けるくらいなら、自分で買ったほうがマシ・・・」
と泣く泣く身銭を切った人も多かったのでしょう。
金券ショップで年賀状が安く買えることを不思議に思う方も多いですが、その多くは自腹購入が流通元だったのです。
年末が近づいてくると、ありとあらゆる場所で年賀状の販売スタッフを見かけます。
「きっとノルマが大変なんだろうな・・・」
と、何だか見方が変わってしまいますよね。
実物を扱わない会社でも油断できない
自社商品を購入させられる例は、何もモノに限ったことではありません。
わかりやすい例だと、生命保険などのサービスが挙げられます。
ある日突然、学生時代の友人から連絡がきて、「保険に入らない?」と誘われた経験のある方も少なくありません。
ノルマを達成するために自ら保険に入るだけならまだしも、友人や親戚へ加入をお願いしたり、ひどいケースだと他人名義の保険料を自分で払っていたケースも。
自腹購入も許せませんが、他人を巻き込んでしまうのはもっと最悪。
10年来の友情をぶち壊してしまうリスクもありますから、くれぐれも注意してください。
会社経費の自己負担は税制面でも不利
「あまり活躍できてないし、経費の自己負担も1万円くらいだから仕方ないかな・・・」
ブラック企業がこの世から根絶されないのは、悲惨な現状を受け入れてしまう人が多いからなのかもしれません。
いいですか、本来会社が支払うべき経費を負担していると税制面でも不利な立場に立たされます。
ここからは、経費を自己負担することの大きすぎるデメリットについて、詳しく見ていきましょう。
所得税や住民税は年収次第
去年1年間で、所得税や住民税をいくら納めたか正確に把握できていますか?
所得税や住民税は所得に対して課税されるもので、年収が高くなるほど税額は上がります。
あなたが個人事業主として開業届を提出済みであれば、確定申告の際に必要経費を計上して、所得税や住民税をある程度下げることはできます。
しかしながら会社員として勤めている場合、基本的に経費を差し引くことはできません。
つまり仕事でしか使わないパソコンを10万円で購入しても、あなたの貯金が10万円減っただけで、所得税や住民税はそのまま課税されるということです。
一部の項目に対しては特定支出控除という制度を利用できるものの、勤め先の承認が必要となるため事実上使えないことがほとんど。
特定支出控除について詳しく知りたい方は、国税庁の以下ページをご覧ください。
経費の自腹は事実上の減給
スマホの通話料や交通費など、本来会社が負担すべき経費を負担させられることは事実上の給与の減額といえるでしょう。
額面は○万円だとしても、自己負担した金額は給与明細にすら記載されません。
毎月数万円を自己負担させられていた場合、経費を差し引いた給与が最低賃金を下回っていることも。
毎月の手取り給与が20万円前後という方は、時間があるときに時給換算した金額を調べてみてください。
必要経費も負担できない会社は危険
ここまでご説明したように、ほとんどの経費は会計上認められているものです。
にもかかわらず従業員に経費を負担をさせるのはなぜなのでしょうか。
考えられる主な理由は以下の4つ。
- 一部の役職者が利益を独り占めしている
- 従業員をこき使うことしか考えていない
- 経営者や経理担当、顧問税理士が相当に無能
- 経費を支払えないほど会社が危機的状況にある など
すべてに共通しているのは、どれもろくな会社ではないということ。
「えっ! スマホ代が経費で認められるなんて、今まで知らなかったー!」
という例はまずありえないでしょう。
ほぼすべてが確信犯と考えて間違いありません。
経費を使いたい放題の役職者たち
「従業員の交通費は自腹だけど、専務は頻繁にタクシーを使ってる・・・」
「うちの社長は会食と称して毎日のように取引先と飲み歩いてる・・・」
従業員には自己負担を強いるくせに、経営者や役職者は経費を使いたい放題というケースはとても多いです。
もちろん、すべての接待がムダだと断定はできません。
とはいえ経費を自腹で払っている従業員からすると、納得できない出費は少なくないでしょう。
毎月、キャバクラ代だけで数十万円〜数百万円もの経費が使われていたら、あなたはどう思いますか?
経費自己負担の会社に未来はない
そもそも経費を適正に計上して利益を減らす行為は、節税対策として広く知られていますし、いっぱしの経営者なら知らないはずはありません。
しかしながら、赤字転落を免れない状況だと、経費を計上しても節税効果は見込めず、経費分だけ会社からお金が流出することになります。
つまりたった数千円〜数万円の経費を従業員に支払えないほど、会社の財政状況がピンチということです。
業績が回復すれば経費を支払ってくれる可能性はあるものの、過度に期待しないほうがよいでしょう。
経費を自己負担させているような会社に未来はありませんから、特別な事情がない限り、早めに別の道を探すことをおすすめします。
経費の自腹が多い会社は今すぐ退職を
たかだか数千円〜数万円の支払いを拒むような会社は、経営に何らかの問題を抱えている可能性が高いです。
赤字が膨れ上がっていたり、そもそも経営者の人格が破綻していたり。
経費として認めるか否かは会社の方針次第。
支払われないということは、つまりそういう会社だということです。
あなたが知らないだけで、世の中にまともな会社はたくさん存在します。
交通費やスマホの通話料、仕事で使うパソコンも当たり前のように支給している会社なんて、ちょっと探せばすぐに見つかるものです。
それでもあなたは、経費を認めてくれない会社で働き続けますか?