くたくたで帰宅した男性

日本では月給制の会社が一般的ですが、年俸制で働いている人も少なくありません。

会社から「年俸制だから残業代は支給されない」と説明されたため、そのように思っている人も多いのではないでしょうか。

しかし会社に雇用されている限り、年俸制であっても原則として残業代を支払わなければなりません。

ここでは悪質な企業に騙されないために、年俸制と残業代の関係について解説していきます。

年俸制とはどういった制度か

札束を胸ポケットに入れる男性

あなたが受け取っている給与について、正しい知識を持っておくことはとても大切です。

特に年俸制という仕組みについて、よくわからないという人も多いでしょう。

ここでは年俸制で残業代が支給されるかということを説明する前に、そもそも年俸制とは何かということについて説明していきましょう。

1年間の給与総額を毎年決める

年俸制とは、労働者の役割や業績に応じて、1年単位で賃金の額を決定する方法です。

一般的には月給制と比べて、能力や業績による変動幅が大きいと言われています。

つまり賃金の額が毎年アップダウンしやすい方式ということです。

ただし労働者は個人事業主ではなく、会社に雇用されている従業員です。

このため残業代など、労働基準法の規定は適用されます。

毎月の給与は年俸を12で割った数字とは限らない

年俸制の金額には、賞与に相当する金額が含まれる場合もあります。

例えば、以下のような場合です。

  • 毎月の給与は、年俸額の16分の1
  • 賞与は年俸額の16分の4として、夏と冬に半分ずつ支払う

このため、毎月どれだけ支給されるかを確認しておく必要があります。

予め固定残業代が含まれている場合がある

年俸制には、予め一定時間分の固定残業代が含まれている場合があります。

この場合、ひと月当たりの固定残業代はいくらか、またどの位の時間に相当するのかを確認しておきましょう。

もちろん固定残業代であっても、通常の時間当たりの給与額よりも25%以上割増した金額で支給しなければなりません。

年俸制でも基本的には残業代の支給が必要

机に置かれた大量の書類

ここまで、年俸制は年間の給与額を毎年決めることであるという説明をしてきました。

しかし実際には、残業代を支払いたくないがために年俸制を採用している企業もあります。

当然のことながら、残業代の支払いを避けるために年俸制を導入する行為は違法です。

ここではどのようなケースであれば残業代を払わなくて良いのか、また残業代を支給すべきケースではどれだけの割増賃金が支払われるのかについて説明します。

会社員と個人事業主では年俸制の意味が異なる

ひとくちに年俸制といっても、雇用されている場合と個人事業主の場合では異なりますから、分けて考える必要があります。

個人事業主の場合は、そもそも残業代の概念がありません。

しかし従業員のように会社に雇用されている場合は、原則として残業をしたら残業代を支払わなければなりません。

そのため、「プロ野球選手も年俸制で残業代は無いのだから、それと同じ」といった説明は、従業員と個人事業主を混同したものであり不適切です。

残業代を支給しなくて良いケースは限られる

従業員が年俸制の場合、残業代を支給しなくて良いケースはあります。

しかしそのケースは以下の通り、限られたものとなっています。

年俸制の場合でも時間外労働や休日労働に対しては、年俸とは別に割増賃金を支払う必要があります。

年俸制だからといって支払わない場合は、労働基準法第37条第1項に違反することとなります。

ただし、以下の2つの場合には、割増賃金を支払う必要はありません。

  • 労働時間の規制が除外されている管理監督者又は機密事務取扱者の場合(労働基準法第41条第2号)
  • みなし労働時間制の適用を受ける労働者の年俸が、みなし労働時間に応じて設定されている場合(労働基準法第38条の2~第38条の4)

年俸制導入時の割増賃金の取り扱いについて|厚生労働省沖縄労働局

なお残業代を支給しなくて良い場合でも、個々の勤務時間の管理はしなければなりません。

これは長時間労働を抑制する等の目的があるためです。

管理職も管理監督者に該当する人は限られる

管理監督者の扱いについては、厚生労働省により以下のように定められています。

  1. 管理監督者(労働基準法41条2号)とは、労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にあるものの意であり、名称にとらわれず、実態に即して判断すべきものです。
    したがって、管理職と呼ばれる地位に至った労働者が直ちに労働基準法上の管理監督者に該当するものではありません。
  2. 管理監督者の判断基準は、以下のとおり。
    ① 当該者の地位、職務内容、責任と権限からみて、労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にあること。
    ② 勤務態様、特に自己の出退勤をはじめとする労働時間について裁量権を有していること。
    ③ 一般の従業員に比してその地位と権限にふさわしい賃金(基本給、手当、賞与)上の処遇を与えられていること。

確かめよう労働条件 3-5「管理監督者」に関する具体的な裁判例の骨子と基本的な方向性|厚生労働省

年俸制で残業代を支払わなくて良いケースは、経営層に近い立場であること等が求められています。

そのため単に管理職であるからといって、残業代を支払わなくて良い理由にはなりません。

もちろん、「名ばかり管理職」は残業代の支給対象となります。

みなし残業が適用されるケースも限られる

残業代不支給が認められるもう1つの条件として、みなし残業があります。

しかしこの条件が認められることにも、高いハードルがあります。

従業員として働く皆様は、以下のようなことは日常的ではないでしょうか。

  • 日々の作業日報を作成したり、メールで報告している
  • 日々の顧客訪問予定や作業予定については、上司が把握できるようにしている
  • 必要があれば、いつでも外出先の従業員に指示ができるようにしている
  • 外出先から直帰する場合は、会社に一報を入れるようにしている

上記のいずれか1つでもあてはまった場合は、みなし残業の対象となりません。

ほとんどの従業員は年俸制でも残業代がもらえる

通帳を持ちながら顔を歪ませている若い男性

上記で説明した通り、残業代を支給しなくて良いケースは限られています。

実際には出勤時刻や退社時刻を自由に決められる、経営層に近い管理職に限られるでしょう。

ほとんどの従業員は、年俸制であっても残業代の支給を受けられることになります。

休日出勤や深夜労働の割増賃金も払う必要がある

休日出勤や深夜労働をさせた場合、年俸制の場合でも割増賃金を支払う必要があります。

この場合、最低でも下記に示した金額を支払わなければなりません。

  • 法定休日に出勤した場合は、時間当たりの賃金の35%増し
  • 法定休日以外に出勤した場合は、超過勤務時間と同じ扱い(25%増し)
  • 深夜労働の場合は、時間当たりの賃金の25%増し(残業をしている場合は50%増し)
  • 法定休日に深夜労働した場合は、時間当たりの賃金の60%増し

法定休日は週1日以上になるように、会社が就業規則等で指定します。

なお法定休日に勤務した場合でも、予め他の日と休日を振替えた場合は、その日は通常の出勤日と同様の扱いになります。

固定残業代込でも固定分を超えた場合は支払いが必要

固定残業代のルールについても、年俸制の有無にかかわらず適用されます。

そのため、給与が固定残業代込みで支払われているからといって、会社はそれ以上の残業代の支払いを免れることはできません。

例えば残業時間が40時間の場合、固定残業代が30時間分しか含まれていない場合は、残りの10時間分について支払う必要があります。

予め残業代を払わない旨、就業規則などに明記しても無効

残業代は労働基準法等の法令により、労働者に支払わなければならないと決められているものです。

そのため、当事者間の契約によって支払わないと定めていても無効となります。

用意周到な企業は、就業規則や雇用契約書に残業代を払わないとはっきり明記し、労働者個人からきちんと誓約書を取るかもしれません。

しかしこのような準備をした場合でも、残業代の支払いを免れることはできません。

また労働者は残業代を受け取らないという契約を結んでいたとしても、従業員は会社に対して法令に従い、残業代の請求をすることができます。

年俸制で働くなら正しい知識を持ちましょう

コーヒーを片手に散歩中の女性

ここまで説明してきた通り、年俸制の人でも会社員として働いているなら、ほとんどの人が残業代の支給対象となります。

そもそも残業をさせられている、または残業をしなければならないということ自体、残業代を支給しなくて良いという条件を満たさないものです。

もし管理監督者やみなし残業が適用されるケースであれば、人から指示を受けなくても、あなたのやりやすいタイミングで仕事ができるように調整できるためです。

また残業代を払わないという規定を完備したり、従業員との間で契約を交わしていたとしても、会社は残業代を払う義務があることに変わりはありません。

そのため「年俸制なので残業代がもらえない」と悩んでいたり、不平不満を持っている人は、弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。

正しい知識を理解し、退職するタイミング等で残業代を請求するようにしましょう。

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