Yahoo!ニュースに掲載されていた以下のニュースを見て、強い違和感を感じました。
氷河期世代を正社員化、採用の企業に助成へ
政府は来年度、バブル崩壊後の就職氷河期(1990年代後半~2000年代前半)に高校・大学などを卒業し、現在は無職や非正規社員の人を正社員として採用した企業に対し、助成金を支給する制度を創設する。
対象となる人の条件や、助成金がいくらになるのかなど、細かい点はこれから明確になっていくものと思いますが、「今更?」という感は否めません。
果たしてこの制度で幸せになれる人はいるのでしょうか。
無職または非正規雇用の30代後半~40代
「無職の30代後半」「非正規雇用の40代前半」
これらのワードが目に入ってきて、ポジティブな印象を抱く人はいるのでしょうか。
正直なところ、ほとんどいないと思います。
一時的な助成金が出るとしても、活躍できる見込みの少ない人を採用できるほど、余裕がある企業は少ないです。
一度正社員として採用してしまうと、後から辞めさせるのは簡単ではないですからね…助成金が数ヶ月にわたって支給されるならまだしも、一時的な支給では採用する側にとってのリスクが大きいです。
厳しい現実として、30代後半にもなると体力的な衰えが見え隠れしてきます。
仕事に対する情熱も感じられず、ここ一番でガッツがない、さらには強い成長意欲も感じられない。
「無職」や「非正規雇用」というワードから連想してしまうのは、そんな人たちです。
実際は会って話をしてみないと何もわからないですし、非正規雇用であっても経験やスキルの豊富な人がたくさんいることは理解しています。
それでもわざわざ積極的に採用したい世代ではない、というのが多くの企業の本音ではないでしょうか。
非常に扱いづらい世代
採用する側にとっては、30代後半〜40代の世代は扱いづらいという点も考えておく必要があります。
業務上必要な知識や経験がないのに、プライドだけは高い人もいますし、パソコンやスマートフォンの操作が苦手で、一つ一つの作業を覚えるのにも時間がかかる人もいたり。
成長余地が少ないことに加え、成長スピードも遅くて、成長意欲もあまり感じられない。
そんな状態では教育を担当する社員のストレスがたまっていくばかりで、社内にマイナスな影響ばかり与えてしまいます。
「30代後半〜40代で活躍できる人はいない。」
というわけではありません。
日々バリバリと活躍している人は、そもそも無職になっていないですし、中には自分で会社を立ち上げていたり、個人事業として働いている人もいます。
単純労働力を必要としている企業は大喜び
工場のライン作業など、単純労働力を必要としている企業にとっては、今回の政府発表はよだれが出てしまうような話に見えているのではないでしょうか。
そこまで特別なスキルや経験を必要とせず、求められるのは目の前の仕事をそつなくこなしていくだけの仕事。
極端な話、高校生のアルバイトでもできるような仕事であっても、今はアルバイトの採用にも苦戦する時代です。安い人件費で正社員雇用すれば、安定的な労働力を確保することができます。
「正社員=残業させ放題、いくらでも働かせられる」
と考えているブラック企業も多いです。
「正社員で採用はされたものの、低賃金でサービス残業ばかり」
といった状況を作らないためにも、助成金だけではなくサービス残業や労働時間の長期化に対する罰則も早急に整備すべきなのです。
今回の助成金のニュースは、単純労働力を必要とする企業にとってはありがたい話ですが、働く側にとってそんな会社に勤めることがプラスになるのかどうかは、きちんと見極める必要があるように思います。
助成金目当ての企業が増える可能性
助成金の詳細が明確にならない限り、まだなんとも言えないところではありますが、助成金目当ての企業がうじゃうじゃと増えそうです。
助成金だけもらっておいて、実際に正社員で採用した人に任せる仕事はアルバイトでもできるような仕事ばかりだったり。
つまらない仕事ばかりを押しつけて、自主的な退職に追い込もうとしたり。
新卒入社の新入社員と同程度の給与しか払わなかったり…
助成金を得ることだけが目的の企業が増えてしまわないように、政府は助成金を支給する条件を細かくすべきなのですが、果たしてどうなることでしょうか。
政府の対応は10年遅かったのでは
文句ばかりを述べていますが、正社員を増やそうとする制度自体は素晴らしいものと思います。
ただあまりにも遅すぎたのではないでしょうか。
40歳で無職の状態と、30歳で無職の状態では、あまりに大きな差があります。
就職氷河期を経験した世代が20代後半〜30代前半の頃にこの制度があったなら、もう少し明るい未来が見えたのではと思います。
今後の選挙に向けたパフォーマンスのようにも見えてしまう今回の政府発表。
正社員としての雇用が増えることは日本経済にとってプラスになることではありますが、果たしてうまく機能するのでしょうか。
今後の政府の動きから目が離せません。